白い翼と…甘い香り
背中から抱き締めたまま
しばらくずっと
暖め合うみたいに
頬を寄せてじっとしてた。
灯ったイルミネーションが
キレイだねって言い合ったり
ここから見ると
私たちの部屋はどこかなって
ホテルを見上げたり
ポツポツとたわいもないことを
話したりしてた。
「なぁ、リカ?」
「ん?」
和也が少し
含み笑いをするような声で
話しかけてきた。
「今日さぁ、楽しかった?」
「うん、すごく
楽しかったけど、何?」
本当に言いたいのは
そんな事じゃないって
何だかそれが分かる
和也の話し方で
声が、いたずらっ子の
子供みたいだった。
「ん~、昼からさぁ
ずっと一緒に居たし
いっぱい歩いて
楽しかったよな」
「うん、凄く楽しかった。
連れてきてくれて
ありがとうね」
「けどさぁ…」
「けど、なぁに?」
もう私は
身動きも出来ないくらい
さらに抱き締めた手に
力を込めた。
和也の腕の中で
1ミリも動けないくらいに
抱きすくめられて
和也は耳許にクチビルを寄せて
小さな声で話すから
吐息がくすぐったくて
少し首をすくめた。
「首がくすぐったいよ」
「ねぇ、俺ら昼からずっと
一緒にいるのに…」
「ん?」
「今日はまだ
1回もキスしてねぇ」
「えっ?」
「キス、したい」
「えっ、待って!」
「今、したい」