白い翼と…甘い香り

「リカが、外で
デートしたいって言ったとき
嬉しかったんだ」

クチビルを離した和也は
私をまた元通りに抱き締めて

小さな掠れた声で
そう言った。

「うん…」

何を言えばいいか分からなくて
小さく相槌だけで返事を返した


私の気持ちの変化に
気付かないで欲しかった。

だから
下手なことは言えなかった。

「はしゃいでるリカ見てんの
楽しかったんだ」

「うん」

「けど、俺のために
無理してんのかなぁって
思ったりもすんだ」

「それは、違うよ」

「そう?
違うなら、いいけど」

「私が、和也と一緒に
どこかへ来たかったの」

強く言った言葉に

「なら、いいや」
と、私を見てニコリと笑った。



無邪気で、真っ直ぐで
曇りのない笑顔は

直球で、私のど真ん中に
投げられてくる。

そして、少し甘えた声で
囁くように言うんだよね。


「なぁ、そろそろ
部屋に帰んね?

キスの、続きが
したいんだけど?」


いつもホントに、言いたい事を
隠さずストレートに言う。


「キスの続きって、なぁに?」

だから、わざと意味が
分からないふりをして

笑いながら
冗談を言うように

私はいつも和也の言葉に
抵抗してみようとする。


「もう、お風呂に入って
寝るだけよね?」

「ふぅ~ん」

「明日の朝も
早起きだもんね」

「へぇ~」

意地悪そうな顔で

「リカは
そんでいいんだ?」

なんて言いながら
「いいよ~」
と笑いながら言う私を

もう一度
ギュッと力を込めて

腰を抱き締めて
引き寄せた。



< 167 / 312 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop