白い翼と…甘い香り
私が目を覚まし少し動いたから
和也を起こしてしまったようで
「リカ?」
と耳元で名前を呼んだ。
「ごめん、起こしちゃったね」
「どした?」
「ん…とね、夢を見て
目が覚めたの」
「怖い夢とか?」
「違うよ、不思議な夢なんだ。
何度目だろ?」
あれ…?
急にハッキリと
何だか鮮明に思い出した。
あの夢を最初に見たのは、確か
電車の中で居眠りした時だった
いつだった、だろう…?
まだ暑くて、でも、そうだっ
クーラーが壊れてしまって
慌てて新しいのを買いに行った
時じゃなかったかな?
真夏の夜にクーラーが壊れて
暑くて眠れなくて寝不足で
買い物に向かう電車の中で
居眠りをして1駅乗り過ごし
慌てて引き返した。
確かお店では、七夕セールとか
やってなかったけ…?
「不思議なって、どんな夢?」
「川の向こうに
何があるんだろう?って
川を眺めてるの」
「なんだそれ?」
「私も、意味が分かんない。
でも、何度も見たんだよ」
「川で溺れるとか水害とか
変に予感してんじゃねぇの?」
和也はそう言って笑った。
でも、そんな雰囲気じゃ
ないんだけどな…
「最初は、電車の中で
居眠りしてて見たの。
それを急にいま思い出したんだ
七夕の時期だったと思う」
「なんで七夕って分かんの?」
「だって電気屋さんで
七夕セールやってたの。
クーラーを買いに行ったんだ」
ふ~んと言ったきり
和也は黙っていた。
少し、何かを考えてた。