白い翼と…甘い香り

「ねぇ、なんで笑ってんの?
和也の言ってること
意味わかんないよ」

つられて私も
クスクスと笑ってた。

「あのな
最初に俺がリカを見たのって
ベランダからって話しただろ?

多分、その
3日後だったと思うんだ」


「何が?」

「七夕の日」

「だから、何?」

言おうか止めようか
少し迷ってるみたいに
苦笑いのような顔をする。


「リカを見掛けた次の日に
あの部屋にするって
不動産屋で決めて来た。

他に見てた候補の部屋も
ぜんぶ断ったんだ。
行動、早いだろ?」


「うん、まぁね〜
だから、それで?」


「3日後に、あの部屋の
カギを貰ったんだ。

だから
また会えるかなって来てみたら
下の公園でリカに擦れ違って
出掛けてるみてぇだから
後をつけてみたんだ」


「私の?」


「だってさぁ
出掛けてる姿みたら
なんか来た意味ねぇじゃんって
思うだろ?

ベランダから覗いたって
居ねぇって事だし」


「そりゃまぁ、そうだけど」

ベランダから
1度見ただけの私を
公園で見掛けてすぐに
分かったんだよね?

たった1度で
どれだけの記憶を刻み込んで
いてくれたのだろう…?



出会いって
ホントに不思議なんだね。

自分の意志で
出会えるものじゃ
ないんだよね。

私が気付いてない時間も
和也はそっとどこかで
見てたんだ。

「そんな話、初めて聞いたよ。
なんで言ってくれなかったの」

「後をつけたとか
ストーカーみてぇじゃん。
言えねぇよ。
だから今まで黙ってた」

「アハハ、確かに」


照れ臭そうに言う姿が
何だかとても可愛いくて

今さらストーカーだと言われても
それは別に悪いイメージを持つ
言葉にはならなかった。


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