白い翼と…甘い香り

サッと目を通すと

「今から、帰ろう。
早い方がいいよ」

「ヤ、だ…」

「道が混んだり
何があるか分かんねぇから
余裕ある方がいいと思うよ」

「もう真夜中だよ」

「だから、夜のうちに
戻った方がいいんじゃね?」

「帰りたくない」

「ちゃんと間に合うように
帰った方が安心できるじゃん
なっ?」



私の顔を覗き込むように
なだめるような言い方をする。


そこまで優しいのは
なんでなの?


私だって、頭じゃ
帰らなきゃならないって
分かってるのに

身体も、心も
言う事を聞かないよ…


帰りたくない。

せめて、朝まで
一緒にいたい。

それだけしか願ってないのに
それは、そんなに
悪いことなの?

初めて2人で外へ出た
大事な日なんだよ?




和也だって
ホントは私に

腹立ってるんでしょう?


なんで?

なんで、そんな
優しい目してるの?


帰したくないって
今だけでも言ってくれれば
いいのに…


そう言ってくれれば
逆に落ち着いて

素直に帰れそうな
気がするのに…


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