白い翼と…甘い香り
和也の言う事を素直に聞いて
夜のうちに東京へ
帰ることにした。
荷物を片付けて抱えると
来た時と同じように
手を繋ぐよう
左手をソッと差し出した。
手を繋ぐだけで悲しくて
切ないなんて…
そんな恋は
間違ってる。
だけど、こんなにも
暖かくて強く包むから
だから私は
手放す事が怖いんだよね。
もう二度と、こんな気持ちで
誰かの手を握る事は
きっと、ないよね。
車に乗り込んで走り出しても
「眠かったら寝ていいよ」
と、優しい態度を崩さない。
眠れるはずも無いのに
眠そうな態度で
会話を避けてる私は
卑怯だって分かってるけど
話す言葉なんか
見付からないよ。
「少し眠い…」と答えながら
和也から背を向けるように
助手席の窓側へ身体を向けた。
私が心の中で何を思ってるか
何も知らない和也は
「また、2人で来ようなっ
どこでも連れてくよ」
と、先の事を計画するように
それを楽しみな事のように
小さな声でそう言った。
返事に困って
眠ったふりをするのが辛かった
次はどこへ行きたいと
答えられない自分が
とても惨めに思えてきた。
ホテルを出た頃から
降り出した雨が
ポツポツと窓ガラスを濡らす。
薄く目を開けた横目で見ながら
流れ落ちる雫が
涙のように思えてきて
まだ、和也の前では
泣いちゃいけない私の
代わりに
泣いてるようで…
やっぱり私たちは
縁結びのお守りに
守られてなかったんだね。
欲しかったけど
買えなかった。
行ってみたかったけど
2人でお参り
できなかったね…