白い翼と…甘い香り

空が少し明るくなる頃
都心の自宅まで帰ってきた。

眠ったふりをしながら
一睡も出来なかった私を

和也は疲れた様子も見せない
笑顔で起こしてくれた。


「余裕で着いたから
大丈夫だろ?」

「時間に余裕あったら
ちょっとでも寝ろよ」

「朝ゴハンも
ちゃんと食べろよ」


エレベータに乗り込んでも
私を気遣う言葉は
何一つ変わらなかった。

「うん」とか
「ありがとう」とか

必要な言葉だけしか
喋らない私を

和也は少し
寂しそうな目で見て


「俺は何も
変わんねぇから」

と、そう言った。



和也の、気持ちが?

2人の、関係が?



私は変わってしまうことを
知ってる。


「うん」と答えながら

笑顔さえ見せられない
自分が情けなくて

泣きそうになる。


< 193 / 312 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop