白い翼と…甘い香り

ほんの何秒かの

でも私には
長い長い沈黙の後で

和也は私の顔を
じっと見てた。

見てる時もじっと黙って
まるで

私の表情から、何かを
読み取ろうとしてるみたいに

穴が開くほど
じっと見てた。



そして
笑うしかないような

とても悲しそうな顔で
ニコッと笑って

「なに? 旅行とか?」
って聞いた。




心のどこにも、そんな考えは
1カケラも無いくせに

私の表情を見てれば
ちゃんと気付いてるクセに

そうだったらいいのにと
希望と願いを込めた

だけど何かに
腹を立てている

そんな言葉に聞こえた。



「ちが…う…
ずっと行くの。

2年は帰って来ないと思う。
主人の仕事関係で引っ越すの」


黙ってしまえば
もう二度とこの言葉は

口から出ない気がして
一気に止まらず喋っていた。


和也の目を見ては
言えなかった。



「2年…?
どういう、意味?」

「もう、会わない。
終わらせる事にしたの」



普通に
話せてるかな…

私まだ
泣かずに喋れてる…?


和也が、あまりにも
キツイ目で見るから

言葉に
詰まっちゃうんだ…



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