白い翼と…甘い香り

「リカは自分の意志で
そう決めたの?」

「うん…」

「いつから?

それはいつから
決まってた?」

「少し、前から…」



そう言ったら
イライラと机を叩いていた指が

何かの記憶に思い当たったよう
ピタッと止まり

拳を握りながら
力を込めた。



「なぁ…
2人で旅行に行ったとき
もう決めてたんだろ?」

「……」

「そーじゃねぇのかよっっ!」



声を荒げて、私に
詰め寄るように怒鳴った。

怒鳴りながら、手に持った
コーヒーカップを投げたから

とても、恐くて…


壁に当たって
割れたカップが

ガチャンと大きな
音を立てた。


和也が
声を大きくして怒鳴る姿を
怒りの感情を表に出す姿を

私は
出会ってから初めて見た。


なんて

悲しそうな
目をしてるんだろう…

「……」


私は何も言えなくて
ただ黙って

でも和也から
目を反らしたくなかった。



泣かないで、ちゃんと

見ていたかったんだ。


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