白い翼と…甘い香り

「抑え込んでなんか無い。

和也の言ってることは
間違ってるの。

あの時は
思い出ができて楽しかった。

ただ、それだけ。

自分の気持ちを
抑え込んでなんか無い

元の場所へ
戻るだけだよ?」


私の言葉に驚いたように

和也は
じっとじっと私を見てた。

少し目を大きくして
睨んでるようで

でも、寂しそうな目で



「そっか…
怒鳴って、ゴメン」

と言ったきり
和也は黙り込んだ。

低く掠れた声は変わらず

悲しそうにも怒ってるようにも
見える表情でそう言ったきり
何も言わなかった。

色々な事を考えている
そんな表情だった。


だから私は、沈黙に

耐えられなかった。



「もう、疲れちゃった。

どうせ最初から遊びみたいな
恋だったんだもん。

終わらせるのは
簡単な事でしょ?

この前みたいに突然
メールが来たりして

慌てるのも面倒だし
イヤになったの。

バレたら困るしね」




用意してた言葉…

和也を、私の方から
突き放せるよう

何度も頭の中で繰り返し
練習して来たセリフ

まだ泣かないで
さりげなく自然に

うまく言えたかな。




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