白い翼と…甘い香り

「だから、違うって
言ってるじゃない。

私は、元の生活が
大事なの。

元通りになるだけ…
それだけの事だよ」



和也は
私の頭を抱え込んだまま

離す事はなかった。

抵抗しようとしても出来ない
強い力じゃないのに…

どうしても
振りほどけなかった。




「元の生活…?

それじゃ、リカはまた
1人で空を見上げるんだ?

泣きそうな、顔で?」


「……」


「自分で
それを選ぶんだろ?」


「……」


「その生活が
どんだけ虚しかったか

何度も俺に
言ってたじゃん。

和也と一緒に居る世界は
すっごく鮮やかだねって

笑ったじゃん。

色がなかった生活に
自分から戻るんだろ?

それが
俺のためじゃなくて

自分のためなの?


笑わ、せんなよ…

ちゃんとリカだけ見てたんだ。
そんくらい、分かんだよ…」


「……」


「俺の事、そんだけ
自分より大事にしてんじゃん」



もう何も

答えられなかった。



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