白い翼と…甘い香り

和也を
起こしたくなくて

泣いてる自分も
見られたくなくて

黙ってこのまま
帰ろうと思った。

繋いだ手を、ソッと
ほどこうとしたら

「泣くなよ…」

って、和也の
小さな声が聞こえた。


「自分で決めたくせに
泣いてんじゃねぇよ」


今度は真っ直ぐな目を向けて
そう言った。

余計に、泣けちゃうよ…



でも、和也だって
泣きそうに見えたから

「もう、泣かない。大丈夫」

私が、笑わなきゃいけない
そんな気持ちになる。

テーブルに置いた
ティッシュを無造作につかんで
涙を拭きながら鼻水をすすると

「色気ねぇな」

と、和也は笑った。

私も一緒になって
泣き笑いしながら

「和也の前じゃ
平気なんだもん」

と、もう一度
鼻水をすすり上げた。

決して、楽しい雰囲気の
笑いでは無かった。

泣きたくないから
笑うしかない

そんな感じで仕方なく
2人は笑ってた。


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