白い翼と…甘い香り
「何でも、ないっ」
「言いたいこと、言ってよ。
そうじゃなきゃ
何も分かんねぇじゃん」
フッとまた
甘い香水が鼻をかすめた。
染み込むように
少しだけ
心を溶かすみたいに…
何で
会って間もない人に
こんな想いが沸くのか
分からない。
何も、知らない。
名前しか
聞いてない。
でも、私の事を
聞いてくれた。
知りたいと
言ってくれた。
目を伏せないで
真っ直ぐに見てくれた。
だから
抑え込んでいた気持ちが
あふれそうになる。
「なんで
泣いてんの?」
泣いてなんか、ないっ!
そんな言葉を
言う余裕もなくて
止めようとする涙が
あふれて、こぼれた。
どうして
涙が出るのかも分からない。
でも
泣いてる私の事でさえ
和也は一度も目をそらさず
真っ直ぐ見てる。
泣き顔なんか
見せたことない。
見せてもいい人なんか
居なかった。
泣いてる私を
真正面から見る目に
どんなに、暖かさを
感じたのか分からない。
何がそんなに
惹きつけるのかも
分からない。
だけど
泣いてる私を見る
和也の目も
少しだけ
泣きそうになってる…
その、目を
ニセモノなんて
思えなかった…