白い翼と…甘い香り
■あと1時間■
飛行機が飛び交う
窓の外をじっと見てた。
正確には、ただ何も考えず
空の向こうの…
何があるのか知らない世界を
ぼんやり見てただけ。
まだ連絡して来ない主人は
きっとまだ仕事の話が
続いてるのだろう。
そろそろ移動しなければ
飛行機に遅れてしまうと思い
歩き出す。
振り向いて歩き出した時
広い広い空港ロビーの
ずっとずっと向こうに
小走りで足早に歩きながら
誰かを探してる様子の
見慣れた人を見つけた。
誰を探してるのかも
一瞬で分かった。
どうしてアナタが
ここにいるの?
息を切らせるように
肩が大きく上下に動いて
遠くからでもそれは
私を探して走って来た
姿だとすぐに分かる。
後ろを向いて、すぐに
隠れてしまおうと思った。
ホントはもう
会いたくなかった。
和也にかける言葉が
どこにも
見付からなかったから
逃げ出そうと思った。
でも、足が動かない。
見送りに
来てくれた?
慌ててる様子ではないけど
少し回りを見回しながら
私を探してるんだよね?
でも見送りなんて
何となくそんな事は
しない人だと思う。
主人と一緒に居るだろう私を
見送るなんてしないと思うのに
じゃあ
どうして来てるのか
分からなかった。