白い翼と…甘い香り
毎日を自由に過ごし
習い事や買い物で時間を潰し
金銭的には困らず
裕福に暮らしている。
周りの人は私を
何の苦労もしてない
幸せな主婦だって思ってる。
誰にも言えず抱え込んだ
「寂しい」という気持ち
「虚しい」という感情
私がそれを言うのは
贅沢なんじゃないかって
黙って我慢するのが
当然なんじゃないかって
そうやって心を
押し込めてきた。
私が黙っている事で
表面は平穏に過ぎて行く日常。
わざわざ
波風を立てる事もないかと
諦めて過ごす毎日。
そんな毎日に
慣れて、麻痺してた。
どこかから抜け出すよりも
諦める方が簡単だって
思ってたから…
だけど、和也の言葉が
閉じ込めていた気持ちを
開け放すみたいに
小さな隙間から
染み込んで来る。
物怖じしない態度と
真っ直ぐな視線
優しい言葉と
甘い、香り
今はそれだけしか
知らないのに
ウソだとは感じられなくて
泣けて来る。
止めようとする
涙が止まらなくて
鼻水をすするようにしながら
もう一度ドアノブを掴んだ。
これ以上恥をかかないうちに
早く、ココから出て行こう。