白い翼と…甘い香り

「いきなり変な事ばかり言って
ごめんね」

だけど
ドアノブを回した私の手を
和也は強引に掴むと

開きかけていた
ドアを強く閉め

ガチャリと
カギを締めてしまった。



腕を引っ張るように

「帰さないよ?
このままじゃ
帰せねぇじゃん…」


そんな言葉を囁きながら
ゆっくりと私を抱き締めた。

なぜ、抱き締められるか
分からない。


呆然とする私の
両腕ごと包むみたいに

抱き締めた、和也の手

片方は腰へ…
もう片方は後ろから
頭を抱え込むみたいに…

たった
2本しかない手で

すべてを
抱き締められてる気がする。


和也の肩へ
アゴを乗せてるみたいな姿勢で
身動き出来ずに居たら

首筋から
甘い香水が強く香ってきて

私はこの時
この香りを一生忘れないって
そんな事を、思ったんだ…

身体につけた香水は
感情に合わせて強く香る…

誰かに、聞いた事があったの。

ねぇ…
和也もドキドキ、してたの?


「だから
笑ってなかったんだ…」

「……?」

何のことを言ってるか
分からない。


「なんど見掛けても
笑ってなかった…」

「なんの、こと…?」


和也は
それ以上何も言わずに
ずっと抱き締めてくれてた。



この腕を
早く振りほどこう…

早く
自分の部屋に帰ろう…


このままじゃ

溺れる…



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