白い翼と…甘い香り
黙って聞いていた主人は
あまり表情を変えなかった。
少し驚いた顔をしたけれど
怒ることもなく
怒鳴ることもなく
黙って聞いていた。
ずっと黙って
私の顔を見ながら考えていた。
寂しそうな表情にも見えて
愛して無くても、切なかった。
「いつか君が、そんな事を
言い出すんじゃないかって
思ってたよ」
スーツのジャケットを脱ぎ
ネクタイを緩めながら
「リカの大事なモノは
日本にあるのか?」
と、静かな声で聞いた。
何年ぶりか分からないけど
私を、リカと呼んでいた。
何だか分からない
涙が出そう…
「ただ帰るだけじゃなくて
私と別れると
そういう意味だろう?」
「うん…」
黙ってうなづくしか
出来なかった。
いつも私を押さえ付けて
いたように感じた主人が
少し諦めるような
顔をしていた。
「明日の朝まで
考えさせてくれ」
そう言うと、自分の
部屋へ入ってしまった。
私の言葉が
通じたか分からないけど
始めて自分の思ってる
本音を言えた気がする。
寂しそうな表情は
気になったけど
言った言葉に後悔はしない。
私は欲しいモノを
手に入れるって
決めたから…
次の朝
私は思ったよりも寝過ぎて
時計を見れば、主人が
出掛ける時間になってた。
慌ててリビングに行っても
主人は居なくて
テーブルの上に手紙があった。