白い翼と…甘い香り

■白い翼■


空港に降り立った私は
まず最初に

和也に逢うよりも先に
貸金庫のある銀行へ向かった。

いつもの担当行員は愛想良く
丁寧な対応で案内してくれる。


あの人が言っていた通り
貸し金庫の中には
判を押した離婚届が入っていた

私の名義で
買ったというマンション
その権利証も入っている。

いつか私が、別れようと
言い出すことを予想してた

そう言ったのは
間違いない事実のように

ずっと前から
準備されてた事だって分かる。

不器用だけど
愛されてた…

それも、こんな時になって
分かってしまうなんてね。


向き合う時を、間違えても
だけどそれは

私には、もう…
取り戻せない時間。

もう、取り戻そうとは
思わない時間。


私の名義で預金した通帳と印鑑
そんなモノまで入っていて

それを簡単に慰謝料だとか
手切れ金だとか思えなくて

そのまま
しまっておくことにした。


離婚届だけを手にして
もう一度カギを締めて貰った。


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