白い翼と…甘い香り

「じっと、しててよ」

「してるじゃんっ」

「手が、動いてるじゃない」

向き合って座り込んで
膝が重なるくらいに近づいて

それを
いつもと変わらないと
感じられる。

私たちには
この近さが
ちょうどいい。


「ん…、だって
勝手に動くんだもん」

「ねぇ、くすぐったいから」

私が笑うと、和也も笑う。

「ねぇ、早くつけてよ」

「だから、動かないでよ」

と言うと、和也は
少しアゴを前に出して
目をつむったから…

クチビルが
触れそうで…

その顔があまりにも可愛くて
思わず、考えるよりも先に

キスをした。

笑いながら、チュって…



「いきなりだな…
俺、我慢してんのに」

「我慢、してたんだ?」

「一応、ね…」

「よし、出来た!
和也にもちゃんとつけたよ。
お揃いだねっ!」


最後の、お揃いだねという
言葉が終わらないうちに
その場に押し倒された。

「もう、我慢はしなくて
いいよね?」

私が笑うと
和也も同じように笑う。


「リカはもう
迷子じゃ、ねぇだろ?」

「うん」


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