白い翼と…甘い香り
「ねぇ、今のキスは好き?」
ふいにクチビルを離した和也は
さっきと変わらない
平然とした顔で聞く。
「うん…」
「優しいキスと
どっちが好き?」
「どっちも、好き…」
「やる前なら
どっちがいい?」
「……」
「ちゃんと答えてよ」
「今の、かな」
「なんで? どんな風に?」
頭の上で掴んだ手は
離さないで押さえ付けたまま
ものすごく
意地悪な顔をして聞く。
でも、その表情が
たまらなくソソる。
「支配されてるみたいで
ドキドキしたから」
「ふぅ~ん
そういうの好きなんだ?」
「分からない
マニュアル通りみたいな
普通の事しかしたこと無い」
「…ん?」
和也は少し
不思議そうな顔をする。
ちょっとだけ
意味が分からないように
首を傾けた。
「そんなに
経験ないから…」
「なんで?」
「なんでって…
そんなの私に聞かないでよ。
今までに付き合った男とか
主人に聞いてみたらいいのよ。
私が、魅力ないんじゃない?」
聞かれた事が辛いんじゃなく
恥ずかしかった。
いい歳をして
子供みたいな事を答えてる。
でも、いい女を
気取る事さえ出来なくて
自分に自信なんて
なかったから
素直に答えるしか
ないじゃない?