白い翼と…甘い香り

部屋に帰ると昼からずっと
動き続けていたクーラーが

寒いくらいに
室内を冷やしていた。

冷えた室内は
身体の火照りを冷ますようで
心地よいのに

でも何だか
この部屋にはもともと
暖かさなんて無かったと

和也の部屋とは
全く違う印象を受ける。


私たち夫婦の部屋に
温もりや暖かさは無い。

こんな温度が
ちょうどいいのかもね…



置いたままの携帯電話が
赤い点滅を繰り返していて

見なくても分かる
メールが届いてる。


~今夜は
接待で遅くなるから
こっちで寝る~

用件のみの
気持ちの無いメール。

~分かりました~

と一言だけ返信をして
フッとため息が出た。



帰らないのなら
夕飯はいらないし

洗濯物を取り込んで畳むと
他にする事もなかった。

自分の夕飯1人分なら
作る気もなくて

暖かいコーヒーを淹れて
牛乳を少し垂らした。

主婦なんて
こんなもんなんだよね、

コーヒーに牛乳なんて
お洒落じゃないし
所帯じみてる。


だけど、カフェオレ風って
勝手に決めて

家でゆっくり飲むなら
コレが1番好きだった。

主人は、コーヒーに
牛乳なんて受け入れない。


だけど、和也なら
何と言うだろう…?

自分が好きじゃないとしても
バカにしたり
拒否したりしないと思う。

そんな事を考えるだけで
なんだか嬉しかった。


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