白い翼と…甘い香り

■7時間後■


シャワーから出ると
冷たいお茶をグラスに注いで
携帯を持ってベランダに出た。

夏の夕暮れの
まだ気温が下がり切らない
生暖かな風と
その匂いが何だか好きで

オレンジ色と藍色が
交ざり合うような夕焼けが
大好きだった。


空を見上げてると
何だかね…

色んな事を
思ってしまう。


和也の
年齢を聞かなかったけど

下手したら一回りくらい
若いかも知れない。

仕事は
何をしてるんだろう?


若いのに
1人で住むには広い部屋だし
そう安くない。




段々と暮れて行く空を見てると
まだ白く見える星が現われて
藍色の割合が増えるたびに
黄色く見えるようになってくる

いつも
そんな事を不思議だと思い
当たり前の景色を
キレイだと思う。


結婚した頃
ベランダから星を見ようと
主人を誘った事があった。


見下したような
バカにしたような目で
何とか言い訳をして断られた。

それから
二度と誘う事は無かった。

他にも、似たような話は
たくさんあって

それがあまりにも良く聞く
「価値観の違い」なんだって
事に気付いた。

もう
その距離を縮めようとか
修復しようだとか

そんな事はとっくに
諦めてしまった。

そんな
もんなのかな…



段々と黄色い星が増えて
月の形がくっきりしてくる。

今夜は、細長く尖った
キレイな弧を描く三日月だった


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