白い翼と…甘い香り

「和也、ベランダに居るよね?

メール送ったら、すぐに
そっちの着信音が聞こえたの。

すぐ近くで
同じ事を思ってるって

そしたら
切なくて会いたくて。

何か泣きそうになったのに
なのに、1人で泣くな…って

そんなの誰にも
言われた事ないもん。

優しい言葉は
切なくなっちゃうんだもん」



呆れられるんじゃないかと思い

出来るだけ
泣かないように話した。

さっきまで一緒に居たのに
逢いたくて泣けるなんて
子供みたい。


だけど
逢いたい。

抱き締め
られたい。

こんなに、こんなに
欲しい物はない。




隣りのベランダで
ガタンと物音が聞こえた。

「リカ?
リカもベランダに居んの?」

「うん…、ずっと居たよ」

「ご主人は?、1人なの?」

「うん、今日は
帰らないんだって…」



私の部屋は角部屋で
その隣りが和也の部屋で

和也の部屋の向こうには
エレベーターが設置されてて

2件だけ隔離されたような
造りのマンションだった。



ベランダは繋がっていて
低めの壁と、その上には

目隠しになるような
パネルで仕切られている。



声を聞く事は簡単で
大きな物音も聞こえる。



電話は
突然にプチッと切れて

どうして切るのだろうと
思う時間もないほど急に

ガタンと物音が聞こえて
だから振り向くと…



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