花火が教えてくれた【企】
ねぇ?
「ねぇ?」
「ん?」
「私、花火がしたい。」
「………。」
またか……。
時計の針は24時を回る30分前。
彼女はしれっと、いつものように、ワガママを言い始めた。
「……もう24時回るし…明日にしたら?」
「……やだ。」
「明日も仕事だろ?」
「…そんなのわかってる。」
彼女はそう言いながら、ぷくっと顔を膨らませて見せた。
いつもこうだ…。
止めたって絶対聴きはしない。
しかも、惚れた弱みなのか、俺は彼女に敵わない。
「……彼氏に頼めば?」
「………。」
「さくらの頼みなら聴いてくれるんじゃないの?」
「………頼めたらココに来てない。」
「………。」
こんな会話も、もう日常。
昔は、幼なじみなんて絶対損だ…と、何度思ったことか。
今はもう諦めがついたけど。
「………花火。」
「わかったよ。」
溜息混じりに重い腰を持ち上げて、仕方なく玄関に向かう。
「やったぁ!」
それを見て、さくらも笑顔で俺を追い掛けてきた。