花火が教えてくれた【企】


『怖がってちゃ何も解らないままだよ?』

「……解ってるよ。」

解ってるよ、言われなくても。

だけど。

そんなにカンタンな事じゃないんだ…。


       *


悩んでいても時間は流れる。
というか、社会人って悩み事を考える時間が少ない。

いいのか悪いのか……。

さくらも数日来ていない。
いつもなら合鍵を使って侵入しているはずなのに、それもない。

これじゃあ話すにしたって、話せやしない…。

「はぁ……。」

溜息をつきながらベッドに転がると、不意に壁に掛けてあるカレンダーが目に入った。

そういえば、いつもの花火大会ってそろそろか…?

毎年、8月の終わりに、夏を締めくくるようなでかい花火大会がある。
この花火大会だけはさくらに彼氏がいてもいなくても、どちらかの実家の縁側で家族と見るのが恒例になっていた。

……けど…。

今年は無理だろうな…。
こんなだし…。

そう思いながら花火大会の日を見ると、落書きがしてあった。


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