花火が教えてくれた【企】
…っていうか。
どうして浴衣…?
反則だろ………。
毎年、花火を一緒に見ているものの、浴衣なんて着て来ないし。
浴衣姿だって見慣れないし、こんな近くで見たことがない。
「暁…?」
俺が内心パニックしていると、不安そうなさくらの声が聴こえてきた。
「ん……?」
精一杯、普通なつもり。
いつも通り…だよな?
…と、思いながら答えると、さくらは不安そうな顔を見せて俯いてしまった。
「今日…もしかして、二人で見るの嫌だった…?」
「……へ?」
思いがけないさくらの言葉に一時停止。
「だって…暁寝てたし…。この前の娘だっているし…。」
なぜだか、さくらはまた泣きそうに見える。
この前からこんな顔ばかり…。
「さくら、どうしたんだ…?」
気付けば、自分でびっくりするくらいの優しい声でさくらに話し掛けていた。
だけど、さくらは俺を見ず、俯いたまま。
それから…前と同じように急に抱き着いてきた。