花火が教えてくれた【企】
駐車場に出ると、彼女は慣れたように俺の車に乗り込んで、車にある好きなCDをかけ始めた。
「誰も変えていいなんて言ってないけど?」
「今はこれが聴きたいの。」
「……はいはい。」
そんな会話をしながら、近くのコンビニまで車を走らせる。
昔から、これがいつものこと。
さくらは俺の実家の隣の家に住む、同い年の女の子。
物心つく前から隣に居て、26歳までそのまま。
当然、一緒に居るのが当たり前になった。
彼女は才色兼備で、かなりモテる。
だから地味な俺とは違って、必ず彼氏がいた。
それでも。
俺との関係は変わらない。
俺が一人で暮らしはじめてからも、フラッと俺の部屋に来ては好きなだけゆっくりし、ワガママを言い、帰っていく。
時々、朝気付けば隣に居てびっくりもするが、何もない。
妹がお兄ちゃんの隣でくつろぐ…彼女にとってはそんな感じなのだろう。
幼なじみは恋に落ちやすい。
ちょっと前まで、彼女の気持ちも知らずドキドキしていた。
なんてバカだったんだろうな…。
今はもう、期待も何にもしない。