花火が教えてくれた【企】
俺の答えに、さくらはパッと顔を上げる。
「なにそれ…。それがお願い?」
「いけない?」
「………。」
笑顔で返した俺に、今度はさくらが黙る番。
それが可愛くて、つい聴きたくなってしまう。
俺ってこんな意地悪だったかな?
「で、さくらのお願いは?」
「……教えない。」
そう言ってさくらはまた俯く。
珍しい俺の様子にさくらも戸惑っているのかもしれない。
俺はと言えば、一度自分の想いを出してしまうと少し気が大きくなるのか…
いつもよりも余裕がある。
「どうして?」
…なんていつもの俺なら、きっと聴けない。
「………。」
やっぱり無言のさくら。
こんなさくら、いつ以来だろう…?
そうこうしている内に、今年一番の、夏を締めくくる、最後の大きな花火が上がった。
「…今年も終わりかな。」
「来年もあるよ。」
小さく呟いた俺の声に、もっと小さな声が答えた。
「それもそうだな…。」
そう言い終えた頃、最後の光が空へ溶けていった…