花火が教えてくれた【企】
部屋に入ってすぐ、さくらの好きな桜色のグラスを出す。
それにいつもの¨アレ¨を淹れてやる。
昔からこれは特別だった。
俺だけしか作り方も知らない。
まぁ…さくらの為に俺が考えたから、当たり前といえば当たり前なんだけど。
誰にも言えない隠し味を入れて、混ぜれば出来上がり。
「はいよ。」
さくらの前に¨アレ¨を置いてやると、彼女は嬉しそうにグラスに手を伸ばした。
「コレは暁のが一番美味しいんだよね。」
そう言いながら、さくらは笑顔を見せた。
「当たり前だ。」
これだけは、俺が一番じゃなければ意味がない。
曇った顔も。
怒ってる時も。
泣きそうな日も。
いつだってさくらが笑う。
魔法のアイスミルクティー。
今まで絶対誰にも譲らなかった。
もちろん、これからだって譲る気はない。