花火が教えてくれた【企】
「違う……。別に何もない。」
彼女は、泣くのを堪えた瞳で俺を睨みながら答える。
…俺の見当違いか?
けれど他には思い浮かばない。
それに何も無いようには見えなかった。
「………もう、いい。帰る!」
「………え?!」
俺が困り果てていると、さくらは思い切り立ち上がり、一人で歩き始めた。
「…え?おい…!さくら?!」
彼女は何も言わない。
確かに海は歩いて帰れるくらい家から近い。
けど、そういう問題でもない。
一体なんなんだ?
今までずっと隣に居て。
どんな話も聴いてきた。
俺がさくらの事で、知らない事も、気づけない事も、一度も無かった。
それなのに………。
「暁(サトシ)は何も解ってない!」
さくらは振り向かず、それだけ叫んで、そのまま走り出してしまった。
「さくらっ……!!」
何が何だか解らない。
さくらに何があったんだ?
悩みながらも、走って追い掛けたけど、彼女はすでに姿を消していた。