Kiss


珍しくこんな時間に着信があったから、おかしいと思った。


「迎えに来て。」


ってさ、電話する相手間違ってんだよ。


嬉しい気持ちと複雑な感情が混ざり合って、胃の辺りがムカムカするんだ。


早くどうにかしてくれないかな?





「もうすぐ着くから。」


ハンドルに片手を乗せて高速を飛ばした。


「わかった。気をつけてね。」


「あぁ、じゃあ。」


電話を切った後、つい苦笑いを浮かべる。


散々ムカついてたくせに、結局残った仕事も放り出して車に飛び乗った。



こんな風に彼女の言葉で簡単に左右される人生ってどうなの?


それでもいいかと思い始めた所がまた痛い。


貴女が幸せで居てくれたら、俺も幸せ。

そんななよっちぃ男にいつからなったんだ?

あぁ、あんたと出会った時からだきっと。



昔好きだった女に久しぶりに会うのは、勇気がいると誰かが言ってた。


歳を重ねれば人は変わる


だから綺麗な思い出のまま残してた方が幸せだと


だったらさ。

今の俺はどうなんだろう


昔より遥かに美しくなったあんたを、目の当たりにして手をノバセナイんだ。


その方がよっぽど不幸。




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