Kiss
「早かったね?」
「そう?」
誰かさんのせいで飛ばしたからね。
「で?帰るんでしょ?」
当たり前な質問を白々しくしてみても、答えなんかわかってる。
「・・・・うん。」
「・・了解。」
ほんの少しの言葉の間に、変な期待をしてしまうからさ、お願いだからハキハキ喋ってよ。
走り出した車の中で、妙に意識をしてるのは多分俺だけ。
「久しぶりだとしてもさ、この時間はマズイんじゃないの?」
「たまにはいいの。」
「これからは終電までに帰れよ。奥さんなんだから。」
「奥さんって呼ばないでよ。」
怒った様に頬を膨らまして俺を振り返るアンタに
「じゃあ何て呼んだらいいの?」
ちょっとだけ意地悪を言ってみる。
「・・・・」
「・・・・」
昔みたいに名前で呼んだらいい?
望むならそれでもいいけど、わかってるでしょ?