Kiss


少し先を行く彼の背中を眺めて、思わず目を伏せる。


降り積もらずに溶ける雪の様に、掴めそうで掴めない。


手の平には触れられるのに、溶けてしまえば冷たさだけが残る。


貴方はいつもそう
掴めそうで掴めない。


触れられるのに決して掴めはしない。





「好き・・・・」


空気に混じって溶けてしまいそうな声。



ザッ・・・

靴が地面に擦れる音が響いて、彼が振り向く。


静かに・・・・

瞬きもせずに・・・・


「・・・・・」


「・・寒くない?」


「・・寒い。」


こんな時だけなんで、嘘つくのが上手いんだろ。


聞こえてたくせに。





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