Kiss


クラスも別、帰る方向も真逆。


俺が世話しなくボールを追い掛けてる間、彼女は美術室に篭りきり。


わざわざ会いに行かなければ、ばったり会う事も少ない。




卒業式当日



長い廊下の向こうから歩いてくる、久しぶりに見る彼女を見つけた。


お互い目も合わせずに、だけど俺の意識は気付けば彼女に集中している。


擦れ違う瞬間がまるでスローモーションの様に重なって、少し振り向きかけた時、窓に反射して映る貴女の姿が見えた。



「・・・・・」


思わず足をとめる。


立ち止まりこちらを振り返った彼女が、酷く悲しそうに見えて


俺は自分がした事にまた後悔しそうになる。



「み・・・」


慌てて振り向いた時には、もう彼女の後ろ姿しか見えなかった。



南・・・

ねぇ

知ってた?


自分の好きな人がね?


1番に自分を想ってくれてるとは限らないんだよ


たったそれだけの事なのに、永遠に叶わない気がする。


妥協出来る位の大人には、まだなれそうもない。



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