幕末に来た少女〜
第五話♯皆の話しをしよう
「なぁ燐」
「何ですか?
近藤さん」
部屋の隅で皆を
見ていたはずの
近藤がいつの間にか
燐の隣に来ていた。
「俺達の最後を
知ってるんだよな?」
〈確かに知ってる……
全員は知らないけど、
大体は覚えてる〉
「そぉですね……
と言っても全員は
覚えてませんよ?」
〈一番言いたくないのは
山南さんと近藤さん
平助とそして沖田さんだ〉
「教えてくれって
言ったら教えてくれるか?」
「はい……」
〈此処で嫌とは言えない〉
「皆、
自分の最期知りたい?」
「うん」
「じゃ誰から話そっか?」
「俺!!」
手を挙げたのは新八だ。
「永倉さ「新八!」」
「分かった、新八からね」
〈新撰組の誰よりも
長生きしたもんね〉
「新八はね、
この中で
一番長生きするんだよ」
燐は話し始めた。
「へぇ〜、
幾つくらいまで?」
「七十六歳」
燐の言葉に
周りは新八を見た。
「七十代まで
生きるのは二人」
「もぉ一人は誰?」
まぁそぉなるな。
「一君だよ」
燐は斎藤の手を
ギュッと握った。
「斎藤君なら長生き
出来そうだよね」
山南が言った。
「そぉだ一君って言えば
結婚して子供が
三人出来るんだよ♪」
何でもないことの様に
さらっと爆弾を落とした燐。
その場に居た全員が
ピシリと固まった。
「斎藤が結婚!?」
〈そんなに驚かなくても〉
「因みに、
子供は皆、男の子だよ」
土方の言葉をサラッと
流して説明を続ける。
「そぉか……」
斎藤も
想像がつかないのだろう。
「一君の子供だから
きっといい子に育つよ」
「それまで此処に
居られるかなぁ」
燐の呟きを斎藤が拾った。
「そぉだといいな」
「うん」
今まで明るかった燐が
暗くなって来た。
「どぉした?」
「長生きして
普通に死ぬのは
新八と一君だけだから
皆の運命を
変えられたら
いいなって思って……」
〈それでも、
沖田さんの運命だけは
きっと変えられない……〉
「そぉなのか」
「うん……」
「ぁ!! そぉだ!!
左之さんも
結婚するんだよ」
先程の暗い雰囲気を
吹き飛ばす様に
態と明るく振る舞う燐が居た。
「ちょっと燐、何で
左之だけ最初っから
名前呼びなの?」
平助が少し不満げに言った
「ぁ〜、
何となくかな……
その方が
呼び易かったから」
燐は
悪戯っ子の様に笑った。
「左之の
嫁さんってどんな人?」
「商家の娘さんで、
八三歳まで生きるんだよ」
斎藤の時と同じ様に
原田の目を
真っすぐ見て言った。
「子供は出来るのか?」
〈言って
いいのだろうか?〉
「うん、一人だけ」
〈言わないでおこう〉
「男の子?女の子?」
「男の子だよ」
「なぁ、燐
この中で酷い死に方を
するのはは誰だ?」
いつの間にか、土方も
燐と呼ぶ様になっている。
「土方さんのいう
酷い死に方とは
どれを指してるのか
分かりませんが
まず、沖田さんは
斬られて
死ぬわけではありません、
そして山南さんは切腹、
近藤さんは斬首
というのが三人の
運命であり、
私が未来で
習ったことです」
〈さて、酷い死に方とは
一体どれだろうか……〉
「質問いいか?」
誰も話そうとしない中で
口を開いたのは近藤だった
「はい」
「まず、総司が斬られて
死ぬわけじゃないって
どういうことだ?」
〈自分のことより
沖田さんのことか……
過保護だなぁ〉
「沖田さんは
労咳にかかって
しまうんです」
〈この時代では
決して治らない病〉
〈結核菌が見つかるのは
この時から十九年も後〉
「労咳かぁ……
確かに直す手立ては
見つかってへんな 」
〈烝君〉
「今、発病してへんってことは
潜伏期間なんやろ?」
〈流石、烝君だなぁ〉
「山崎さん、何で知ってるんだ?」
藤堂の質問に山崎は
燐にバトンタッチした。
「それは、燐が知っとるよ」
〈もぉ~〉
「 烝君、自分で
説明すればいいのに」
「めんどくさいからいやや」
燐は一度ため息を吐いてから
説明をしはじめた。
「もぉ、しょうがないなぁ
烝君の生家は医者の家系で
松本先生も 烝君の腕を認めてるんだよ」
その説明に皆が納得した様子だ。
「だから色々、詳しいのか」
「そぉいうことや」
説明したのは燐なのだが
何故か山崎が偉そうである。
「流石に松本先生一人では
隊士全員を診るのは大変だし、
近藤さんも土方さんも
それをわかってて烝君を
入隊させたんですよね?」
二人の方を向いて質問した。
「やっぱり、燐は知ってたか」
珍しく、土方が
おどけたような仕草をした。
「なんせ、未来から来ましたから」
燐は勝ち誇ったような顔で言った。
屯所に来て、さほど
時間は経っていないのに
皆は燐を信用していた。
「僕は幾つまで
生きるんですか?」
「二七歳だよ」
今回は沖田の目を
見れなかったようだ……
「労咳か……
未来では治るんか?」
山崎が聞いて来た。
「うん」
今では治る病。
「それは、無念だろな」
土方まで俯いた。
「じゃぁ、
山南さんの切腹と
近藤さんの斬首は
何で……」
「山南さんは伊東さんが
入隊したことと
身体が弱っていたことで
色々と限界が来てしまってのか
元治二年の二月に
突然、江戸へ行くと
手紙を残して
此処を出てしまいます。
そして近藤さんは、
坂本龍馬暗殺容疑を
新撰組に
かけられたことで
責任者として
斬首されてしまうんですよ」
長々とノンブレスで言った
燐の声は段々と
小さくなっていった。
この言葉に
反応したのは勿論平助だ。
伊東は平助の師である。
「伊東先生が
此処に来ることと
山南さんが
出ていくことが
何の関係があるの?」
必死の形相の平助。
「来年の六月五日、
皆は池田屋っていう所へ
密会してる浪士達を
捕まえに行くんだけど、
平助はその時に
怪我をして
一旦江戸に帰り、
伊東さんを
連れて戻って来る。
だけど、伊東さんは
平隊士としてじゃなく
初めから参謀として
此処に来たことで
再編成され、
山南さんは今の
副長という立場から
総長にされる。
そぉなれば、どうなるか
大体想像はつくでしょう?
しかも、介錯をするのは
沖田さんなんだよ……」
誰も口を開こうとしない。
聞いた土方ですら
まさか、
こんなに酷いとは
思わなかっただろう。
「ねぇ燐、
俺がその池田屋で
怪我しないで江戸にも
帰んなければ
山南さんの運命を
変えられるのかな?」
静かな部屋に
平助の決して
大きくない声が響いた。
「そぉかもしれないね……
分からないけど、
私がこの時代に
来たことで
何かが変わると思いたい」
〈沖田さんの労咳だけは
どうにも出来ないけど、
出来れば食い止めたい
山南さんの脱走も
近藤さんの斬首も……〉
「最後に
芹沢さんってどぉなるの?」
燐はその質問に
一瞬戸惑ってから
正直に答えた。
「土方さん達自らの手で
暗殺するんですよ……」
〈これも運命〉
「こんな暗い話しは止めよう」
暗〜くなった雰囲気を
無理矢理明るくするべく、
燐が一際
大きな声で言った。
「そぉだな」
芹沢粛清のメンバーには
山南も入っている。
〈とにかく、
目の前のことから
一つ一つ解決していけば
きっと、皆の運命を
変えられるきっかけが
見つかるかも知れない。〉
〈彼は
好きじゃなかったけど
きっと、新撰組を
思ってたに違いない〉
それから三日後
芹沢は土方達によって
暗殺された。
歴史と違うのは
愛人だった梅が
生きていること。
逃走した平間は
見つからないままで……
「何ですか?
近藤さん」
部屋の隅で皆を
見ていたはずの
近藤がいつの間にか
燐の隣に来ていた。
「俺達の最後を
知ってるんだよな?」
〈確かに知ってる……
全員は知らないけど、
大体は覚えてる〉
「そぉですね……
と言っても全員は
覚えてませんよ?」
〈一番言いたくないのは
山南さんと近藤さん
平助とそして沖田さんだ〉
「教えてくれって
言ったら教えてくれるか?」
「はい……」
〈此処で嫌とは言えない〉
「皆、
自分の最期知りたい?」
「うん」
「じゃ誰から話そっか?」
「俺!!」
手を挙げたのは新八だ。
「永倉さ「新八!」」
「分かった、新八からね」
〈新撰組の誰よりも
長生きしたもんね〉
「新八はね、
この中で
一番長生きするんだよ」
燐は話し始めた。
「へぇ〜、
幾つくらいまで?」
「七十六歳」
燐の言葉に
周りは新八を見た。
「七十代まで
生きるのは二人」
「もぉ一人は誰?」
まぁそぉなるな。
「一君だよ」
燐は斎藤の手を
ギュッと握った。
「斎藤君なら長生き
出来そうだよね」
山南が言った。
「そぉだ一君って言えば
結婚して子供が
三人出来るんだよ♪」
何でもないことの様に
さらっと爆弾を落とした燐。
その場に居た全員が
ピシリと固まった。
「斎藤が結婚!?」
〈そんなに驚かなくても〉
「因みに、
子供は皆、男の子だよ」
土方の言葉をサラッと
流して説明を続ける。
「そぉか……」
斎藤も
想像がつかないのだろう。
「一君の子供だから
きっといい子に育つよ」
「それまで此処に
居られるかなぁ」
燐の呟きを斎藤が拾った。
「そぉだといいな」
「うん」
今まで明るかった燐が
暗くなって来た。
「どぉした?」
「長生きして
普通に死ぬのは
新八と一君だけだから
皆の運命を
変えられたら
いいなって思って……」
〈それでも、
沖田さんの運命だけは
きっと変えられない……〉
「そぉなのか」
「うん……」
「ぁ!! そぉだ!!
左之さんも
結婚するんだよ」
先程の暗い雰囲気を
吹き飛ばす様に
態と明るく振る舞う燐が居た。
「ちょっと燐、何で
左之だけ最初っから
名前呼びなの?」
平助が少し不満げに言った
「ぁ〜、
何となくかな……
その方が
呼び易かったから」
燐は
悪戯っ子の様に笑った。
「左之の
嫁さんってどんな人?」
「商家の娘さんで、
八三歳まで生きるんだよ」
斎藤の時と同じ様に
原田の目を
真っすぐ見て言った。
「子供は出来るのか?」
〈言って
いいのだろうか?〉
「うん、一人だけ」
〈言わないでおこう〉
「男の子?女の子?」
「男の子だよ」
「なぁ、燐
この中で酷い死に方を
するのはは誰だ?」
いつの間にか、土方も
燐と呼ぶ様になっている。
「土方さんのいう
酷い死に方とは
どれを指してるのか
分かりませんが
まず、沖田さんは
斬られて
死ぬわけではありません、
そして山南さんは切腹、
近藤さんは斬首
というのが三人の
運命であり、
私が未来で
習ったことです」
〈さて、酷い死に方とは
一体どれだろうか……〉
「質問いいか?」
誰も話そうとしない中で
口を開いたのは近藤だった
「はい」
「まず、総司が斬られて
死ぬわけじゃないって
どういうことだ?」
〈自分のことより
沖田さんのことか……
過保護だなぁ〉
「沖田さんは
労咳にかかって
しまうんです」
〈この時代では
決して治らない病〉
〈結核菌が見つかるのは
この時から十九年も後〉
「労咳かぁ……
確かに直す手立ては
見つかってへんな 」
〈烝君〉
「今、発病してへんってことは
潜伏期間なんやろ?」
〈流石、烝君だなぁ〉
「山崎さん、何で知ってるんだ?」
藤堂の質問に山崎は
燐にバトンタッチした。
「それは、燐が知っとるよ」
〈もぉ~〉
「 烝君、自分で
説明すればいいのに」
「めんどくさいからいやや」
燐は一度ため息を吐いてから
説明をしはじめた。
「もぉ、しょうがないなぁ
烝君の生家は医者の家系で
松本先生も 烝君の腕を認めてるんだよ」
その説明に皆が納得した様子だ。
「だから色々、詳しいのか」
「そぉいうことや」
説明したのは燐なのだが
何故か山崎が偉そうである。
「流石に松本先生一人では
隊士全員を診るのは大変だし、
近藤さんも土方さんも
それをわかってて烝君を
入隊させたんですよね?」
二人の方を向いて質問した。
「やっぱり、燐は知ってたか」
珍しく、土方が
おどけたような仕草をした。
「なんせ、未来から来ましたから」
燐は勝ち誇ったような顔で言った。
屯所に来て、さほど
時間は経っていないのに
皆は燐を信用していた。
「僕は幾つまで
生きるんですか?」
「二七歳だよ」
今回は沖田の目を
見れなかったようだ……
「労咳か……
未来では治るんか?」
山崎が聞いて来た。
「うん」
今では治る病。
「それは、無念だろな」
土方まで俯いた。
「じゃぁ、
山南さんの切腹と
近藤さんの斬首は
何で……」
「山南さんは伊東さんが
入隊したことと
身体が弱っていたことで
色々と限界が来てしまってのか
元治二年の二月に
突然、江戸へ行くと
手紙を残して
此処を出てしまいます。
そして近藤さんは、
坂本龍馬暗殺容疑を
新撰組に
かけられたことで
責任者として
斬首されてしまうんですよ」
長々とノンブレスで言った
燐の声は段々と
小さくなっていった。
この言葉に
反応したのは勿論平助だ。
伊東は平助の師である。
「伊東先生が
此処に来ることと
山南さんが
出ていくことが
何の関係があるの?」
必死の形相の平助。
「来年の六月五日、
皆は池田屋っていう所へ
密会してる浪士達を
捕まえに行くんだけど、
平助はその時に
怪我をして
一旦江戸に帰り、
伊東さんを
連れて戻って来る。
だけど、伊東さんは
平隊士としてじゃなく
初めから参謀として
此処に来たことで
再編成され、
山南さんは今の
副長という立場から
総長にされる。
そぉなれば、どうなるか
大体想像はつくでしょう?
しかも、介錯をするのは
沖田さんなんだよ……」
誰も口を開こうとしない。
聞いた土方ですら
まさか、
こんなに酷いとは
思わなかっただろう。
「ねぇ燐、
俺がその池田屋で
怪我しないで江戸にも
帰んなければ
山南さんの運命を
変えられるのかな?」
静かな部屋に
平助の決して
大きくない声が響いた。
「そぉかもしれないね……
分からないけど、
私がこの時代に
来たことで
何かが変わると思いたい」
〈沖田さんの労咳だけは
どうにも出来ないけど、
出来れば食い止めたい
山南さんの脱走も
近藤さんの斬首も……〉
「最後に
芹沢さんってどぉなるの?」
燐はその質問に
一瞬戸惑ってから
正直に答えた。
「土方さん達自らの手で
暗殺するんですよ……」
〈これも運命〉
「こんな暗い話しは止めよう」
暗〜くなった雰囲気を
無理矢理明るくするべく、
燐が一際
大きな声で言った。
「そぉだな」
芹沢粛清のメンバーには
山南も入っている。
〈とにかく、
目の前のことから
一つ一つ解決していけば
きっと、皆の運命を
変えられるきっかけが
見つかるかも知れない。〉
〈彼は
好きじゃなかったけど
きっと、新撰組を
思ってたに違いない〉
それから三日後
芹沢は土方達によって
暗殺された。
歴史と違うのは
愛人だった梅が
生きていること。
逃走した平間は
見つからないままで……