瑠璃色の夢は泡沫に沈む
 ギーシュ伯爵領、その中心トーゼルよりやや西方に位置するレクエル村。中心にほど近いというのに豊かな緑に包まれた田舎の景観を強く残すその村は、ディアンからして酷く寂れた村に見えた。


「……昔の趣を強く残す村だが…随分と、寂しいな」


 そう零したディアンに、ラフィンも同意を示しながら馬を下りる。年を入れて兵士の格好をせず旅装の格好はしているが、誤魔化しきれるかは自信がない。


 それでも体裁だけは調えてあるため、よほどのことがない限りは大丈夫だろうと言い聞かす。


「……それで、どう行動しますか?」


「とりあえず村の様子を見よう。話を聞くのはそれからだ」


 民たちの声を聞かずとも、民たちの暮らしぶりを見ればどんな生活を送っているかは大体把握できる。


 それに、公式な使者や王族としての観光という名目で訪れたわけでは決してない。密偵として来ているのだ。なるべく他人との接触も避けたい。下手に印象づけてしまえば、動くことも難しい。


 それを考えた上での結論だったが、ラフィンには多く語らずとも伝わったらしく、穏やかな笑みで了承の意を述べられた。
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