瑠璃色の夢は泡沫に沈む
「……荷を盗むにしては、まだまだ手際が悪いな」


 ふっと笑って手元にあるナイフを遊ばせるディアンに、少年は瞳をぎらつかせた。


「うるさいっ! さっさと放せよ、おっさん!」


「………俺はまだ十代だ」


 少年の暴言に複雑な顔で反論しながら、ディアンはラフィンに目配せする。


 地面に膝をつき、少年をそっと放したラフィンはすぐに立ち上がり、馬の手綱を握る。


 ディアンは手にしていたナイフを少年の手に握らせ、ふっと笑みを零しながら少年を見つめる。


「次はもう少し腕を上げてからやるんだな。気配がまだ隠しきれてないから」


 その言葉に、少年は瞠目してディアンを見つめる。


「………止めろって言わないのか?」


「何故そんなことを言う必要がある?」


 逆に問を投げ返され、少年は視線を彷徨わせた。そんな彼の様子にふっと笑み零しながら、ディアンは言う。


「そうしなければ生きていけなかったのだろう? 他人が必死に生にしがみついて重ねる罪を、咎めるほど俺も偽善者を演じる気はない」


 そう。これは少年が生きていくために選んだ方策。それを否定することは、彼の生き様を否定するのと同義だとディアンは思う。
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