~夏の思い出~ 君に、初恋。【完結】
店を出て家につくころには、もう夕方だった。
俺の手には、着物屋でもらった紙。
あと、浴衣な。
「…行ってくれんのかな。」
手元の紙を眺めながら、目の前の赤い屋根の家に入った。
「唯!お帰りなさい!」
「おお。ただいま。」
なんか、照れるな。
妃の笑顔は、眩しい。
「あれ、買い物は、それだけなんですか?」
ひとつの紙袋を見て、そう聞いてくる妃。
「大きな袋ですねえ。」
「まあな。」
「何ですか、それは?」
「ん?なんだろうな。」
頭の上にたくさんハテナを浮かべたような表情を見せた妃が、たまらなく愛おしいと思う。