LITTLE
 こんな麗太君を見たのは、今日が初めてだった。
 学校で見る彼はもっと明るく、クラスではムードメーカーの様な存在であった筈だ。
 やはり、ママの安否が心配なのだろうか。


 そんな考えを浮かべている内に、既に部屋には沈黙が下りていた。
 どうしよう……。
 なんか、お腹が痛くなってきた。
 昔から、こんな堅苦しい状況に陥ると、いつも私はお腹を壊す。
「ごめんね。ちょっと、トイレに行ってくるね」
 立ち上がり、私は逃げる様に自分の部屋から出た。

 二階のトイレで用を済ませた。
 そういえば、ママと麗太君のパパは、まだ玄関で話しているのだろうか。
 階段の上から玄関を覗くと、そこには誰もいない。
 どうやら、話は終わった様だ。
 一階のリビングへ行くと、ママは頭を抱えた状態でソファーに座っていた。
「ちょっと、どうしたの!?」
 ママはゆっくりと顔を私の方へ向ける。
 その表情は、涙に濡れていた。
「麗太君のママ……。さっき、病院で息を引き取ったんですって」
「そんな……」
 私には、直接の接点はない。
 しかし、ママにとっての麗太君のママは、近所付き合いでありながら親友の様に仲の良かった存在だ。
 勿論、麗太君にとっては、それ以上の存在でもある。
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