LITTLE
「でも、優子ちゃん。困っちゃってますよ」
 藤原先生だ。
「藤原先生?!」
 私と麗太君は顔を見合わせる。
「麗太君、もしかしてママから何か聞いてるの?」
 麗太君は首を横に振る。
 良かった。
 私だけが何も知らない訳ではないようだ・
 藤原先生とママが座敷から降りる。
「こんにちは。優子ちゃん、麗太君。二人とも、学校以外で会うのは初めてね」
「え……あ、はい。そうですね」
 色々な事が突然に起こり過ぎて、上手く言葉が出せない。
「ちょっと、優子。先生の前なんだからハキハキしなさいよ」
 ママはからかう様に私に言った。
「で、でも……あの」
「まあまあ上がりなさいよ。長い立ち話なんかしてたら腰にくるわ」
 お婆ちゃんは私達を座敷の奥の部屋に招いた。

 表の駄菓子屋の外観とは打って変わって、招き入れられた座敷の奥には、普通の居間があった。
 中央には縦長な卓袱台が置かれていて、部屋の隅には大きなテレビがある。
 卓袱台の上に置かれた駄菓子の束や、三つの湯のみ茶碗と急須を見るに、三人ともさっきまでここで談義していたのだろうか。
「さぁ座って」
 お婆ちゃんに言われ、皆が縦長な卓袱台を囲んで座る。
「はい、どうぞ」
 お婆ちゃんは私達の前に、粉の入った小さな市販の袋を二つ置いた。
 袋には、よく見るコーラとサイダーの模様が描かれている。
「これは?」
「知らないのかい。ちょっと待ってなよ」
 お婆ちゃんはゆっくりと立ち上がり、暫くしてから水の入ったコップを二つ持って来た。
 袋をポンポンと叩き、コーラと書かれている方の袋の粉を水の中に入れ、かき混ぜる。
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