LITTLE
「もしかして、沙耶原と何かあった?」
 沙耶原。
 その名前が出た瞬間、反射的に机から体を起こしていた。
「ち、違うよ! 麗太君とは、そういうのじゃなくて……その……」
 そして頬を真赤に染めて弁解していた。
 まずい、誰かに聞かれちゃったかな。
 教室を見渡してみると、運良く男子は一人もおらず、数人の女の子がちらほらといるだけだった。
 どうやら今の話は、誰にも聞かれていない様だ。
「優子は分かりやすいなぁ」
 マミちゃんは溜息を吐き、私をゆっくりと椅子に座らせた。
「よし、落ち着いて。今、教室にはあんまり人がいないし、大きな声を出さない限り大丈夫だから」
「あの……えっと……」
 昨日あった事なんて、マミちゃんに言える訳がない。
 もし言ったとして、マミちゃんは男子だからという理由だけではなく、心の底から本気で麗太君を敵視する筈だ。
「あの、麗太君は……」
「沙耶原君がどうしたって?」
 どうにか誤魔化そうと言葉を探していたところ、話を聞き付けたのか、由美ちゃんがこちらへ来た。
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