LITTLE
 額に手を添えてみるとまだ熱いが、歩けない程ではない。
 ベットから降り上履きを履いて、カーテンを開けた。
 保健室には誰もいない。
 私以外に寝ている人も保険医の先生も。
 ただ、保健室の外から声が聞こえて来る。
 どこかのクラスが音楽の授業で、合唱をしているのだろう。
 まだダルイし、合唱を聴きながら眠ろう。

「平井さん」
 暫くして、保険医の先生に起こされた。
「大丈夫? 熱は?」
 額に手を添えられる。
「熱は……まだ少しあるかもね。担任の先生に頼んで、お母さん呼んで貰えるけど、お母さんは今、家にいるの?」
「はい……たぶん」
「そう、良かった。こんな状態で歩いて帰るなんて辛いものね。荷物は、さっき友達が持って来てくれたからね」
 部屋の隅に置かれている椅子には、私のランドセルが置いてある。
 いったい、誰が持って来てくれたんだろう。
 マミちゃんかな。
 保険医の先生は藤原先生の所へ、連絡を取ってもらいに行ってくれた。
 手を添えられた額をさする。
 保険医の先生って、なんだかお婆ちゃんみたいで可愛い。
 とりあえず、椅子に座って待ってようかな。
 椅子に腰掛け、意味もなくぐるぐると周る。
 外で蝉がうるさく鳴いている。
 もうすぐ夏休みか。
 夏休みには、麗太君と過ごす時間が格段に増える。
 それまでには、麗太君の前では普通にいられる様にならないと。
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