LITTLE
「そ、そんな訳ないじゃないですか! もう!」
「あらそう。でも、全く気がないっていうなら、真っ先に優子ちゃんの所へ行って、運び出すなんて事はしないと思うわよ」
 赤面してあたふたしている私に先生は「もう、背伸びしちゃって」と笑っていた。
 確かに、先生の言う事にも一理あるのだ。
 麗太君は、私の事をどう思っているのだろう。
 私は……。
 そういえばあの時、私がマミちゃんに言おうとした言葉を思い出した。
 倒れる寸前、私が言おうとしていた言葉。
 私は麗太君の事が……。
 そうだ。
 きっともう、私は麗太君の事が好きになってしまっているんだ。
 この短い期間を一緒に過ごすうちに、私は無意識のうちに彼を理解し出して、好きになってしまっていた。
 これはたぶんもしかしたら、よく聞くが今まで経験のなかった初恋というやつだ。


 ママはタクシーで、学校まで迎えに来てくれていた。
 そういえば、うちの車はパパが出張先へ乗って行ってしまったんだ。
 タクシーなんて、お金も掛かっただろうに。
「タクシー代、優子のお小遣いから削らなきゃね」
 無邪気に笑いながら、そう言っていた。
 本当にお小遣いを削られる事はないと思うけど。

 家に帰るとシャワーだけ浴びて、私はすぐ布団に入った。
 麗太君はまだ帰って来ていなかった。
 きっと、クラスの男の子達とどこかで遊んでいるのだろう。
 それか光原君と、あの駄菓子屋に行っているか。
 ああ、また麗太君の事が頭に浮かぶ。
 私は本当に麗太君の事が好きなんだな。
 そう改めて実感した。
 麗太君の事を考えながら、私はゆっくりと目を瞑った。
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