LITTLE
 眼が覚めた時、周りは完全に暗くなっていて、冷房の弱風だけが、無造作に吹いていた。
 なんだか体が熱い。
 熱がぶり返してしまったのだろうか。
 パジャマが汗で濡れていて、気持ちが悪い。
 それに喉も乾いている。
 ママの所へ行って、何か飲ませてもらおう。
 体に掛かっている布団を避けて、ふらふらとベットから立ち上がった。
 やばい、頭がくらくらする上に、一歩が重い。
 ちょっとずつドアの方へ進み、部屋から出ようとした時だ。
 私がドアを開けるより先に、ドアが開いた。
 誰かが来たのだ。
 ドアが開くと、そこには麗太君がいた。
 彼の両手にはお盆、その上にポカリスウェットとコップがある。
「麗太君……」
 掠れた小さな声で呟いてすぐ、麗太君が来てくれた為の安堵感からか、全身の力が一気に抜け、私は彼の胸に倒れた。
 麗太君は今、どんな表情をしているのだろう。
 いきなり倒れ込んじゃったから、びっくりしているのかな。
 見上げると、麗太君は今にも泣き出しそうな顔をしている。
「大丈夫だよ……ただの風邪なんだから」
 掠れた小さな声で言い聞かせた。
 麗太君は手に持っていたお盆を近くにある棚の上に置くと、両手で私の体をゆっくりと抱き締めた。
 感じたその香りは、やはりママとパパの香りと一緒だった。


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