LITTLE
 翌日の朝、私の体調は完全に回復していた。
 熱も下がっているみたいだし、ダルくもない。
 リビングへ行くと、ダルそうにソファに座っている麗太君の姿が目に入った。
「あれ? 麗太君、どうしたの?」
「きっと、優子のが移ったのね」
 ママは体温計を用意し、麗太君に差し出した。
 彼はそれを受け取ると脇に挟み、またぐったりと背にもたれる。
 ああ、なるほど。
 原因は昨日のキスか。
 そのせいで、菌が麗太君の方へ行ってしまったんだ。
 麗太君の事が気掛かりで、学校なんて行く気になれない。
「麗太君、私のせいで……」
 俯く私にの頭に、ママはポンッと軽く手を置いた。
「優子。あなたは今日、休んだ方が良いと思うんだけど」
「え?」
「様子見よ。学校へ行って、風邪がぶり返しちゃったらいけないからね」
「それじゃあ……」
 ママはニコッと笑い、私の頭を優しく撫でた。
「移したのは優子なんだから、麗太君の側にいてあげなさいよ。まあ、程々にね」
「うん!」
 夏休み直前の平日。
 私達は、二人揃って学校を欠席した。
 麗太君と二人っきりになっても、もう妙な感覚を覚える事はない。
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