歩く光の彼方には。
昔から、夢を見る。

自分がよく分からない誰かによって殺されてしまう夢。けれどそれは、いつも殺される寸前で止まるのだ。だから彼女は、その先の自分がどうなったかを知らない。けれど、知らない方がいいのかもしれない。自分が死んだ後の世界なんて。




「全く、うちらが出る試合じゃないならさっさと帰って練習しましょうよー」


「馬鹿、いのり。そんなこと言ってるからあんたはいつまでもチームプレーが出来ないの。ちょっとは他の学校の試合見て見習う!」


「えー…つまらないなぁ……」


とある市立体育館。

そこでは、今日は中学女子バスケの地区予選が行われていた。

バスケ特有の熱気、観客の声援、この手でシュートを打つ感覚。そのすべてが自分を熱くさせ、奮い立たせてくれる。

ーーーただし、自分の試合に限る。


そんなことを、市立松原中学校2年、バスケ部エースの古賀いのりは不貞腐れて口を尖らせながら思っていた。
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