歩く光の彼方には。
「……ん、どこだっけ、主将たちの席」


無事買い物を終えたいのりは現在地が分からず固まった。ただでさえ見慣れぬ場所なのだが、さらに迷ってしまった。

きょろきょろと辺りを見回す。ここはどこだろう。入場の時に見た覚えがない。

いのりが立ち尽くしていると、ぼんやりしていたせいか人にぶつかってしまった。


「あっ、ごめんなさい…」

「……別に、大丈夫です」


そこにいたのは小柄な少女だった。白皙の頬が薔薇色に染まり、琥珀色の大きな瞳は冷静に眼前の出来事を見つめているようなーーーそんな、少女。

いのりはふと、この少女に既視感を感じた。

この少女と私は、出会っているのではないか?

もしかして、この少女はーーー


「……どうしました?大丈夫ですか?」

「あ…」


自身の考えへと至っていたいのりは、少女の言葉で我に帰る。何を考えているのだ。ここにいるのは、ただの初対面の少女なのだ。


「ごめんなさい、少しぼんやりしてました」

「そうですか。……一緒に行きましょうか?」

「いや、いいです。ありがとうございます」


そう言って、いのりと少女はそれぞれの場所へ歩を進める。

歩き出すいのりの耳に、


《アガペー》


と聞こえた気がして振り向く。

……あったのは、ただ長い廊下だけだった。

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