君が欲しい

「何も、思い出せないんです」

やけに白い病室のベッドで、ポツリと呟いた。

本当、白いペンキをぶちまけたようにその部屋は白い。

天井も、スリッパも、使われていない花瓶も、どこもかしこも白、白、白。

自分だけが汚れた異物みたいで、居心地が悪い。

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