聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
 ゼフロスのいる理事長室を辞して。



 自室へと舞い戻った青年は、そこにいる自分よりも少しだけ高い身長の友人を見つける。



「…………何処に行っていた?」



「調査の報告に、少しだけ理事長室にね」



 ふわりと笑うが、友人の顔は難しいままだ。



「―――サリアに知識を与えたのは、いったい誰だ?」



「……おそらく、推測通りだと思うよ」



 微笑めば、友人が息を飲むのが分かった。それほどに衝撃の強い事実だったらしい。



 だがすぐに持ち直し、彼は静かにそうかとだけつぶやいた。まったく、何年たってもこの落ち着きだけは人並み以上だとつくづく思う。
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