聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
 配られていく問題用紙を見つめながら、サリアは深呼吸をする。



「時間は120分。配られた問題用紙の問題を解け」



 基礎的な知識とはいえ、その数は膨大である。細かく紙に記載された内容に、たじたじになる生徒がちらほらいる中、サリアは不思議と落ち着いていた。



 四年間、このファーストという学年で必死に魔法使いとしての挫折をしそうになりながらも必死に食らいついてきた。……実技や魔力は基準ぎりぎりだとしても、四年間蓄えた知識は嘘をつくはずがないのだから。



 そう思えるのは、きっと寮の部屋から出るときに、自分に贈られたアルジスからの言葉が頭の中に響いているからかもしれない。



『……サリアは、この一ヵ月必死に頑張ったんだ。その努力が、嘘をつくはずがない。―――胸を張って、挑め』



 一番近くで自分を支えてくれたひとが、大丈夫だと言ってくれるのなら。………きっと、自分は合格できる。



 大丈夫。大丈夫。――――努力は、嘘をつかないのだから。



「では、はじめ―――」



 その掛け声と同時に各所で響き始めた紙を滑るペンの音を聴きながら。



 サリアはついにペン先を紙の上で滑らせ始めた―――…。
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